腸内細菌と花粉症の関係性:エンテロタイプ別の改善方法と最新研究
2022年11月に日本の研究機関Cykinso社を中心とした研究チームが発表した調査結果によると、腸内細菌の構成タイプ(エンテロタイプ)に合わせた生活習慣の改善が花粉症症状を効果的に軽減できることが実証されました。この研究は腸内細菌と花粉症の関連性について新たな知見を提供しています。
腸内細菌と花粉症の関連性:科学的根拠とは
花粉症の重症度に影響する腸内細菌の種類
花粉症は国内外で広く見られるアレルギー性鼻炎の一種で、特に日本では春先のスギ花粉による症状に悩まされる人が多くいます。近年の研究では、この花粉症の症状と腸内細菌叢(腸内フローラ)の間に密接な関連があることが明らかになってきました。
Cykinso社らの研究では、花粉症患者190名と健康な対照群92名の腸内細菌を分析した結果、特定の腸内細菌の存在が花粉症の重症度に影響することが判明しました。特に、プレボテラ(Prevotella)とフェカリバクテリウム(Faecalibacterium)が豊富に存在する腸内環境(PFエンテロタイプ)を持つ人は、花粉症の症状が有意に軽減される傾向にあることがわかりました。
腸内細菌エンテロタイプによる花粉症症状の違い
人間の腸内細菌は個人によって大きく異なりますが、研究によると大まかに3つの「エンテロタイプ」に分類できることがわかっています。この研究では、バクテロイデス(Bacteroides)優勢型、プレボテラ(Prevotella)優勢型、ルミノコッカス(Ruminococcus)優勢型の3つのエンテロタイプが確認されました。さらに、バクテロイデスとプレボテラの優勢型はそれぞれ2つのサブタイプに分けられ、合計5つのエンテロタイプに分類されています。
腸内細菌のエンテロタイプと花粉症改善の個人差
バクテロイデス優勢型の特徴と対策法
バクテロイデス優勢型のエンテロタイプ(B型)は、日本人を含む多くの先進国の人々に多く見られるタイプです。この研究では、B型はさらにフェカリバクテリウムが豊富なBF型とメガモナスおよびフソバクテリウムが豊富なBM型の2つのサブタイプに分類されました。
BF型の人々(研究対象者の27%)は、睡眠の質が花粉症の症状に大きく影響することが明らかになりました。一方、BM型の人々(研究対象者の16%)は、1日3食の規則正しい食事摂取が花粉症症状の改善と関連していました。
プレボテラ優勢型とルミノコッカス優勢型の特性
プレボテラ優勢型(P型)は、植物性食品を多く摂取する傾向のある食生活と関連しており、研究対象者の約18%を占めていました。P型もさらに2つのサブタイプに分類され、フェカリバクテリウムが豊富なPF型(13%)とメガモナスおよびフソバクテリウムが豊富なPM型(4.7%)に分けられました。
ルミノコッカス優勢型(R型)は研究対象者の約39%を占め、最も多いエンテロタイプでした。R型の人々は発酵植物食品の摂取が花粉症の症状改善に効果的でした。
エンテロタイプに応じた生活習慣改善プログラムの効果
研究では、各エンテロタイプに合わせた「腸内活動プログラム」を実施することで、花粉症の症状が有意に改善することが実証されました。このプログラムは4週間にわたって実施され、参加者はベースライン調査で判定されたエンテロタイプに基づいた生活習慣の改善指導を受けました。
プログラムの具体的な内容は、エンテロタイプ別に次のように設計されました:
- BF型:睡眠の質の改善に焦点
- BM型:1日3食の規則正しい食事の維持
- PF型:乳製品の摂取増加
- PM型:動物性タンパク質の摂取促進
- R型:発酵植物食品の摂取増加
花粉症改善のための腸内細菌を整える食事と生活習慣
発酵食品と食物繊維摂取による腸内環境の改善
腸内細菌のバランスを整えるうえで、発酵食品と食物繊維の摂取は特に重要であることが研究で明らかになっています。発酵食品は、生きた有益な細菌(プロバイオティクス)を腸内に供給し、多様な腸内細菌叢の形成を促進します。
研究結果によると、発酵植物食品(納豆や漬物など)の摂取は花粉症の重症度スコアの軽減と有意に関連していました(係数=-0.320、p=0.006)。特にプレボテラ-フェカリバクテリウム優勢型(PF型)の人々においては、発酵植物食品の摂取が花粉症リスクを大幅に低減させました(オッズ比0.21、p=0.015)
腸内細菌のバランスを整えるサプリメントの選び方
腸内細菌のバランスを整えるためのサプリメントとして、プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方が注目されています。研究によると、これらのサプリメントの効果は個人の腸内細菌のエンテロタイプによって異なる可能性があります。
サプリメントを選ぶ際は、自分のエンテロタイプに適した菌株を選ぶことが重要です。研究結果に基づくと:
- BF型:睡眠の質を改善するサプリメント
- PF型:ラクトバチルス属とビフィドバクテリウム属の複合菌株を含むサプリメント
- R型:発酵植物由来の乳酸菌を含むサプリメント
まとめ
腸内細菌と花粉症の関係は個人のエンテロタイプによって大きく異なることが科学的に証明されました。自分の腸内細菌タイプに合わせた食事や生活習慣の改善により、花粉症症状を効果的に軽減できます。特に発酵食品の摂取や規則正しい食生活、良質な睡眠が重要です。パーソナライズドアプローチで花粉の季節も快適に過ごしましょう。